ツーアウト満塁空振り三振

生活密着型ウェブダイアリ1.0

 心をにごすな


 心がにごりっぱなしのせいか、せっかく真正面四つでがっぷり組みたかった「鉄コン筋クリート」、クロとイタチがにのだった…。邪念だらけ。反省。

  • クロとシロだけが対なんじゃなくて、ネズミと木村、ネズミとクロ、藤村と沢田、藤村とネズミ、沢田とシロ…という対にそれぞれ視点を変えていくと多くの二項対立がある物語なんだなあと気づく。
  • ぐーっと作品に入り込んでしまうのは映像のせいだと思う。アニメばかにしちゃいけないね。というかこの作品はアニメであることを忘れるときがある。すごく緻密で手の込んだ映像。メイキングを見たら街の細部それぞれまで目が離せなくなってしまった。
  • 特典映像で最も衝撃を受けたのはにののアテレコ。これは彼が私の王子だからなのか、単純に役者としての能力に驚いたのか、作品が好きで私なりの思い入れが出来てきたからなのかよく分からないのだけど、なかなかクロがでてこなかったにのが、やくざ事務所に乗り込んでいく戦闘シーンで変わっていくところ。にのの顔が表情が目が口元が、クロになっていくのが分かる。ちょっと鳥肌が立ったというか、ぞっとした。なんだあの子。
  • で、そのシーンは映画を初めて観たときに印象的だったシーンで、私は暴力的なシーンは好まないのだけど、そのときのクロの大人に対する挑発的な言動がものすごくリアルで怖いくらいだった。クロと言う人間がよく描かれているシーンだった。だから印象的だったのだけど、そのシーンでにのがあんな変貌を遂げていることを知ったらますます特別な思いを持つようになった。
  • どうでもいいことだけど、シロが刺される前ひとりで龍だか虎だかに追いかけられている俯瞰のシーンで、トタン屋根に「嵐」って入ってるのはにのの事務所への何か?(笑)
  • シロ役の蒼井優ちゃんは原作読んだとき音が聞こえてきて、その音のイメージどおりのシロをやろうと思ったそうだ。すごい二人がそろっちゃったもんだね。
  • 邪念を持ったまま感想を言うとイタチの「楽しもうぜえ」はたまらん。
  • じっちゃの登場シーンと「沢田もいっぱいネジないな」「沢田クロに似てる」って言うシロの台詞と、「理想型が明確であればあるほど『たかが』ということばそこにない」という内容の蛇の台詞はちょっと残して欲しかったな…。
  • 私はこの物語を一応ハッピーエンドだと思ってる。ひとつ区切りがついたな、と。本当はぜんぜん問題は解決してないし、いつ噴出してくるか分からないので、ハッピーじゃないのかもしれないけど。
  • キャストのインタビュー聞くと、男の子は松本大洋好きねえと思っちゃう。
  • にのは原作を10年読み続けていてすごく思い入れもあるみたい。クロや作品に対する思いなどもおそらく明確に語るものを持っているのにそれを「こうだ」とは言い切らないところが彼は賢いと思う。自分が言われたくないからなんでしょうけど。そして分からない部分があることを包括して好きだということも言っていて、作品に対して愛情を持っているのがよく分かったし、作品の愛し方としてはそれもありなんだなと思った。そう、わかんないんだよね。観念的なところは。


 今年の私の心の上半期ベストテン第1位にしたい、この作品。(ちょうど半年で10作観ている。舞妓はーんは2位に陥落…!)