ツーアウト満塁空振り三振

生活密着型ウェブダイアリ1.0

 嫌われ松子の一生


 見てきた。id:boxcurioさんから「原作を読んで、映画はちょっと違うと思った方も是非」というお勧めもあり。感想を書くとネタバレになるんだけど、もう公開して数週間経っているのでまぁいいかということにする。


 以下、感想。個人的で面倒な感情も含む。それでもよければ。


 私には松子は笑えない。私は、松子を笑えるほど大人じゃないなあと思った。某アイドルの人のくだりで笑いが起きたけれど、それも少し憎たらしいと感じるくらい私は入り込んでしまったのかも。映画の感傷が残りすぎて、レイトショーの終わった池袋の街の喧騒の中で、不意に泣き出したくなって、我慢しながら帰宅した。涙もろくなるのは、プレ更年期でよくないらしのだけど、PMSのブルーな時期に、レイトショーで、しかもビールを少し飲んだ後で見るもんじゃないと思った。映画の中盤で、ボロボロと泣いてしまった。カップルが多かった中、一人キモノ姿で。なんかおかしな人みたいだ。いやだな。だってあれは松子と同じ種類であれば誰にでも起きうることなんだもの。


 ここに居ても地獄、出て行っても地獄。同じ地獄なら、一人ぼっちは嫌だ。リアルで切ない。似たような環境で傍から見れば充実して楽しそうでも、誰かがそばに居る人とは違う、その一抹の寂しさ。ああ、でも松子は強いな。私はいっくら好きな相手だからと言っても、地獄まで一緒に行けるのだろうか。私にはその勇気すらないだろうな。原作を読んでから、映画の予告編を見たときに、「え、松子をそんなエンターテイメントにしちゃうの?」と言うわけのわからない疑問が涌いたのだが、松子目線であればあれはアリなんだな。むしろ、それだけの強さがあるんだな…。それでもやっぱり、笑っていられなかったけど。


 かわいそう、悲惨だと評される松子の人生だけど、観終わってから気づいた。そうじゃないんだ。確かにあのままひかり荘でゴミに埋もれて死んでしまったら悲惨だけど、松子は松子なりの希望や期待を胸に、夢を見るように死んでしまったわけだから、それはせめてもの救いだったのだと思う。会場が明るくなってから、カップルの彼女のほうが「松子かわいそう」と言っていたけれど、それは少し違う。不幸もあったけど、どん底で死んだわけじゃなかったんだ。笙と言う理解者も得たし、ある種のハッピーエンドではあったんだ。そう感じて少し安心した。


 映画として、ここは好きだったとか、ここは蛇足だったとか思う場面はあるけれど、そういうのも原作も全部ひっくるめて、私はこの作品が好きだったんだなあって実はさっき気がついた。


 あ、あと中谷さんは同じ歳だと思うんだけど、凄みのある美人だな、とつくづく思う。ソープ嬢の頃が美しすぎる。